二重追い越しは違反にならない?道交法の盲点と2台抜きを徹底解説
前を走る遅い車をパスしようとした瞬間、「これは二重追い越しになって違反になるのだろうか」と不安がよぎった経験を持つドライバーは少なくありません。教習所で習ったはずの交通ルールですが、実際の道路上では「2台まとめて追い越す行為」や「原付を追い越すシチュエーション」など、違反かどうかの判断に迷う場面が多々存在します。
警察による取り締まりの現場や交通事故の示談交渉において、追い越しをめぐる解釈の食い違いはトラブルの火種になりがちです。道路交通法が規定する正確なルール、違反が成立する厳密な条件、そして反則金や行政処分の内容までを詳しく整理しました。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:二重追い越しは「前車が追越し中の時に、さらにそれを追い越す行為」であり、2台をまとめて一気に抜く行為自体は道交法上の二重追い越しに該当しない。
- 要点2:追越しを仕掛けている前車が原付や軽車両である場合は例外規定が存在するが、追越し禁止場所での追越しは対象を問わず一発で違反となる。
- 要点3:二重追い越しの違反点数は2点で反則金は普通車9,000円が科され、事故発生時の過失割合は追越車側に極めて重い責任(80〜90%以上)が課される。
【道路交通法第29条】二重追い越しの正しい定義と「追い抜き」との決定的な違い
道路交通法第29条(追越しの禁止)では、二重追い越しについて明確な条文が置かれています。法律上の定義は「車両は、他の車両(原動機付自転車及び軽車両を除く)が他の車両を追い越そうとしているときは、その追越しを始めてはならない」というものです。
つまり、前の車(車A)がさらに前の車(車B)を追い越そうと進路を変えて加速している最中に、後続の車(車C)が車Aごとまとめて追い越そうとする行為を指します。追い越し動作に入っている車両の死角に入りやすく、正面衝突や側面衝突のリスクが極めて高いために禁止されています。
ここで混同しやすいのが「追い越し」と「追い抜き」の違いです。
道路交通法において「追い越し」とは、進路を変えて進行中の前車の前方に出る行為を指します。これに対して「追い抜き」とは、進路を変えずにそのまま進行して前車の前方に出る行為です。車線変更を伴わずに側方をそのまま通過する追い抜きであれば、第29条の二重追い越し規制には抵触しません。
実は違反にならない?「2台連続追い越し」と「原付の例外」の真実
ドライバーの間で最も誤解されているのが、「前方に連なる2台の車をまとめて1回の車線変更で追い越す行為(2台連続追い越し)」です。SNSやネット上でも「2台まとめて抜いたら二重追い越しで捕まった」という噂が散見されますが、これは法解釈として誤りです。
先行する2台がどちらも追い越し動作をしておらず、単に車列を作って走っているだけであれば、後続車がその2台を一気に追い越しても道路交通法第29条の二重追い越しには該当しません。あくまで「他の車両が追越しをしている最中」に追い越しを重ねることが二重追い越しの成立要件だからです。
ただし、2台まとめて追い越す行為が法的に完全に無罪放免というわけではありません。対向車線の見通しが悪い状態で強引に前に出る行為は、道路交通法第70条の「安全運転義務違反」や、法定速度を超過したことによる「速度超過違反」に問われるリスクがあります。
さらに、第29条には重要な除外規定が設けられています。条文にある通り、追い越し動作を行っている前車が原動機付自転車(原付)や軽車両(自転車など)である場合は、二重追い越しの禁止対象から除外されます。原付が低速の自転車を追い越そうとしている横を、後続の乗用車が追い越していく行為は二重追い越し違反には問われません。ただし、自転車や原付との十分な安全間隔(側方間隔)の確保は必須です。
高速道路や片側2車線ではどうなる?複数車線での追い越しルール
片側2車線以上の幹線道路や高速道路における追越しルールも、ドライバーが混乱しやすいポイントです。複数車線が存在する道路では、車両通行帯(レーン)の走行区分が原則となります。
片側2車線の道路で第1通行帯(走行車線)を走る車を、第2通行帯(追越車線)から順次抜き去っていく行為は、車線変更を伴わない限り「追い抜き」とみなされるため、二重追い越しには当たりません。高速道路で走行車線の車列を追越車線からスムーズにパスしていく運転は日常的に行われており、完全に適法です。
注意すべきは、追越車線を走行している前走車がさらに右側から何かを抜こうとする状況、あるいは走行車線から無理な車線変更を繰り返して追越車線の車をさらに左側から追い越す「左側追い越し」です。道路交通法第28条により、追い越しは原則として「右側」を通行しなければならず、左側からの追い越しは別の違反行為(追越方法違反)として取り締まりの対象になります。
【2026年最新】二重追い越しの違反点数と反則金・追越し禁止場所の全貌
二重追い越しを行って警察に検挙された場合、道路交通法違反(追越し違反)として行政処分および反則金が科されます。
違反点数は一律で「2点」が付加されます。反則金は車両区分ごとに定められており、普通車の場合は9,000円、大型車は12,000円、二輪車は7,000円、小型特殊・原付は6,000円です。
あわせて把握しておくべきは、道路交通法第30条で定められている「追越しを禁止する場所」です。以下の場所では、二重追い越しであるか否かにかかわらず、いかなる追い越し行為も全面的に禁じられています。
【道路交通法第30条が定める追越し禁止場所】
・道路の曲がり角付近
・上り坂の頂上付近および勾配の急な下り坂
・トンネル(車両通行帯が設けられていない場合)
・交差点およびその手前30メートル以内の場所(優先道路を通行している場合を除く)
・踏切およびその手前30メートル以内の場所
・横断歩道や自転車横断帯、およびその手前30メートル以内の場所
・道路標識や道路標示(黄色の中央線など)によって追越しが禁止されている場所
「2台連続で追い越しただけだから二重追い越しではない」と主張しても、その場所が交差点の手前30メートル以内や黄色の中央線が引かれた区間であれば、第30条違反(追越し禁止場所違反)として検挙されます。取り締まりの実務上、こちらの違反で処理されるケースが圧倒的多数を占めています。
万が一の事故で過失割合はどうなる?法的責任とドラレコによる過失認定
二重追い越しが引き金となって発生した交通事故では、二重追い越しを試みた車両に対して極めて厳しい過失割合が割り当てられます。
代表的な事故形態として、前走車Aがさらに前方の低速車Bを追い越そうと右側へ進路変更した際、後方から強引に二重追い越しを仕掛けてきた車Cと衝突するパターンがあります。この場合、基本的な過失割合は「追越車C:80%〜90% / 先行追越車A:10%〜20%」と、後続の追越車側に大半の責任が認められます。
さらに、追越禁止場所での追い越しであった場合や、著しいスピード超過があった場合は「重過失」として加算修正が適用され、「100:0」の全額責任が追越車に課されるケースも珍しくありません。
ドライブレコーダーの映像解析技術が標準化した現在、前走車がウインカーを出したタイミングや追越し行動の着手順序はミリ秒単位で客観的に証明されます。「前が急に進路を塞いできた」という言い訳は通用せず、無理な追い越しを仕掛けた側の過失が動かぬ証拠として認定されます。
【二重追い越し】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:黄色の中央線をはみ出さなければ、前の車を追い越しても二重追い越しになりませんか?
A1:中央線をはみ出していなくても、前走車が他の車両を追い越そうとしている最中に、その右側を通って前進する行為は二重追い越し(道交法第29条違反)になります。追い越し違反の基準は「車線のはみ出しの有無」ではなく「先行車の追越し動作中にさらに追越しを開始したかどうか」です。
Q2:前の車がハザードを焚いて停車している場合、それを追い越すのは違反ですか?
A2:停車中の車両の側方を通過して前方に出る行為は「追い越し」ではなく「障害物の回避(通過)」に該当します。したがって二重追い越しには当たりません。対向車や後方の安全を十分に確認した上で側方を通過できます。
Q3:前の車が遅いトラクターを追い越そうとしています。その後ろについて一緒に追い越すのはダメですか?
A3:前の車がトラクターの追越しを完了し、元の車線に戻るまで追越しを開始してはいけません。前車の追越し中に後続車が追越し動作に入ると、二重追い越し違反が成立します。必ず前車が車線復帰したのを確認してから、単独で追越しを開始してください。
まとめ:正しい追越しルールの理解が事故と違反を防ぐ防壁になる
二重追い越しの本質は、「追い越し中の車両をさらに追い越してはならない」という危険回避の原則にあります。2台まとめての追い越しが直ちに二重追い越しにならないとはいえ、速度超過や追越し禁止場所の規定、安全運転義務との兼ね合いを考慮すれば、無理な追い越しにメリットは一切ありません。
わずか数秒の短縮のために違反点数2点や高額な反則金、最悪の場合は過失割合10割の重大事故リスクを背負うのは割に合いません。道路の構造と前走車の挙動を冷静に見極め、確実な安全マージンを確保した運転を徹底してください。 (出典: 二 重 追い越し(Yahoo!ニュース))